しおせ便り
和菓子屋の日常を様々な角度からお届け。普段何気なくお召し上がりいただいているお菓子も、贈り物にいただいたお菓子も。作る工程や職人技を知れば、違う角度が見えてきて、もっともっと美味しく思えてくるから不思議です。
柏餅
柏餅は、5月5日の「端午の節句」に欠かせないお菓子。店頭に柏餅が並びだすと、初夏の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか? 1700年代後半、江戸時代に誕生したという柏餅。柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない」ひいては「子孫繁栄」の象徴とされ、端午の節句に柏餅を供えるという風習が生まれました。その後、参勤交代で全国に広まったとされる、とても古い歴史を持つお菓子の1つです。 塩瀬総本家でも白と赤、2種類の柏餅をご用意しています。白い柏餅は、北海道産エリモショウズを使用した、塩瀬総本家自慢のこし餡を入れたもの。赤い柏餅は、コクのある「みそ餡」が入っています。このみそ餡は、白餡に京都産の白味噌を加えたもの。通常の料理に使う白味噌とはまた違い、塩分が控えめなので、みそ餡独特の風味と甘味が生まれるのです。 こだわりの餡を包むお餅は、上質な上新粉をじっくりと蒸し、つき上げて仕上げたもの。柔らかさと歯切れの良さが自慢です。この生地で餡を包み、ハマグリの形に1つ1つ整えたら、柏の葉を巻いて出来上がり。葉で巻いた時のおさまりの良さと、縁起物であるハマグリの形にあやかって作っています。多くの和菓子店の柏餅がハマグリの形をしていますが、両端を少し上げた「兜」の形に成形しているお店もわずかながらあるようです。実は塩瀬総本家でも、兜の形に成形していたこともあったのですが、今はハマグリの形に統一しています。 柏餅の特徴である「柏の葉」。この葉っぱにも、いろいろと秘密があるのをご存知でしょうか? 塩瀬総本家の柏餅は、こし餡には茶色、味噌餡には緑色の柏の葉を使っていますが、昔は、すべて茶色でした。柏の葉が、お餅を包める大きさに成長するのは6月ごろ。しかし、柏餅のシーズンは5月5日までですからちょうどいい大きさの柏の葉は手に入らない。そのため昔は、柏の葉を適切な大きさの時期に収穫し、煮沸して乾燥させ、翌年まで保存していたそうです。そのため、柏餅の葉っぱは茶色でした。現在は柏の葉を緑色のまま保存する技術もあるので、塩瀬総本家では2種類の葉の色で柏餅を提供できるというわけです。ちなみに柏の木が少ない西日本などの地域では、柏の葉以外の葉を使うこともあると聞きます。 この柏餅、柏の葉という自然界のものを使うため、どうしても日持ちがしない……という特性があります。そのために作りおきができず、端午の節句が近くなると大型連休もなんのその、作業場は毎日早朝から柏餅づくりに大忙し! この光景もまた、塩瀬総本家の風物詩の1つです。毎年、5月5日までしか販売されない柏餅。お子様の健やかな成長を願いながら、ぜひお召し上がりください。
柏餅
柏餅は、5月5日の「端午の節句」に欠かせないお菓子。店頭に柏餅が並びだすと、初夏の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか? 1700年代後半、江戸時代に誕生したという柏餅。柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない」ひいては「子孫繁栄」の象徴とされ、端午の節句に...
焼き印
塩瀬総本家の看板商品である「志ほせ饅頭」といえば、「志ほせ」の焼き印がついた小ぶりな薯蕷饅頭の姿を、すぐ思い浮かべていただけるかと思います。 今回は、この「焼き印」のお話です。和菓子ではおなじみの意匠である焼き印。実はこの「志ほせ饅頭」の「志ほせ」というのも、焼き印から生まれた名前なのです。というのも、この「志ほせ饅頭」が現在の大きさにリニューアルされた際、旧字の「鹽瀬」という漢字は画数が多いため、焼き印で押すことが難しかったのだとか。そこで志の当て字と共に「志ほせ」という表記になり、名前も「志ほせ饅頭」となった、という経緯があります。 作業場には、数多くの焼き印があります。ススキや松葉など、季節に合わせたお菓子に使うもの。「干支饅頭」に使う十二支は、文字とイラストの両方が。「寿」や「祝」などお祝いに使う文字は、饅頭の大きさに合わせ各種取り揃えています。また、宮内庁や皇室関連のお菓子に使われる菊の御紋も。これらは、花びらの数によって使われる場所が違います。焼き印は専門業者に発注して作っていただくのですが、実は意外と消耗品。というのも、高温に熱するために酸化してしまい、志ほせ饅頭などよく使う焼き印は1年も持ちません。 この「焼き印を押す」という作業の様子を、少しご紹介しましょう。できたての饅頭に焼き印を押すと、皮が焼き印にくっついてしまうため、志ほせ饅頭に焼き印を押す作業は、饅頭の粗熱が少し取れてから始まります。ガス火で焼き印を熱し、濡れ布巾で少し温度を調節してからポンポンとリズミカルに押していきます。焼き色のムラが出ないよう、そして中心から外れないようにスピーディーに押していくという作業。まっ白い薯蕷饅頭の表面がキュッとわずかに沈み、焼き印が付くこの様子、見ていてとても“気持ちが良い”のです。また、この作業の時にはなんとも甘く香ばしい、とてもいい匂いが立ち上ります。バーベキューやキャンプで「焼きマシュマロ」をしたことがある方には、あの匂いというとイメージしやすいでしょうか? いつの日か、お客様に体感していただきたいものの1つでもあります。 今はフードプリントも進化し、食品に食用色素を使ってイラストなども印字できる時代となりました。塩瀬でも、イベント販売やノベルティなどにさまざまな「オリジナル饅頭」のご依頼がございます。もちろんそういったものにもご対応できますが、昔ながらのこの焼き印というスタイルを、お客様からご要望いただくことも実は多いのです。お菓子に映え、「おいしそう」と思えるからでしょうか?シンプルな意匠ながら、とても奥深いものだと思います。会社のロゴやマークなど、特注の焼き印をご用意することも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
焼き印
塩瀬総本家の看板商品である「志ほせ饅頭」といえば、「志ほせ」の焼き印がついた小ぶりな薯蕷饅頭の姿を、すぐ思い浮かべていただけるかと思います。 今回は、この「焼き印」のお話です。和菓子ではおなじみの意匠である焼き印。実はこの「志ほせ饅頭」の「志ほせ」というのも、焼き印から生まれた名前なのです。と...
紅白饅頭
おめでたい席に使われる引き菓子の定番、紅白饅頭。年間を通してお求めいただく商品ですが、特に3月から5月にかけての時期、塩瀬総本家ではこの紅白饅頭づくりがピークを迎えます。卒業式や入学式、入社式などにお使いいただくのはもちろん、5月には創立記念日を迎える企業も多いのがその理由です。「紅」と「白」、2個で1セットですから、生産する数はその倍。ときに千セット以上にもなる紅白饅頭づくりは、大きなご注文が入る日には生産から箱詰めまで職人が総出で行なう「春の風物詩」の1つです。三島由紀夫の小説『仮面の告白』(1949年)にも主人公が通う学校の式日の様子が描かれ、「かえりに貰う塩瀬の菓子折」と書かれており式日の定番として塩瀬饅頭が使われていることが伺えます。 この「引き菓子」の風習と「紅白饅頭」、双方ともに塩瀬に由来があることをご存知でしょうか? 実は塩瀬初代・林浄因が自身の婚礼の際、紅白の饅頭を引出物にしたことが「紅白饅頭」の文化のはじまり。饅頭博物誌によれば「当時としてはすばらしく新鮮でハイカラなアイデア、幕末か明治の初期にチョコをたっぷりつけたケーキを配るようなもの」で話題になり、そこからおめでたい席には紅白饅頭、もしくはお菓子を振る舞う風習が広まっていったというわけです(とくに関西に紅白饅頭の文化が根強いのはそのためです)。 その時、林浄因が子孫繁栄を願い一組の紅白饅頭を、大きな丸い石の下に埋めたと言われており、その石は林浄因を祀った奈良県の林神社に「饅頭塚」として今も残っています。「紅白」という色の組み合わせ自体、由来はとても古いもの。源平の戦いにおいて源氏が白旗、平家が赤旗を用いたとも言われています。この赤色、使う色素によっても色合いが変わってくるので、どんな「紅」を出すのかは和菓子店ごとにもこだわりがあるところです。 塩瀬総本家の紅白饅頭は、皮は名物の「志ほせ饅頭」と同じもの。餡は「白」が、志ほせ饅頭と同じこし餡、「赤」には白餡が使われています。これは、黒い餡を中に入れると生地の赤色がきれいに見えないからというこだわり。この白餡入りの薯蕷饅頭は、塩瀬では「紅白饅頭」でしか食べられないある意味“レアもの”と言えるかもしれません。もっちりとした皮の食感とそれぞれの餡の組み合わせ、ぜひともお楽しみください。 塩瀬では、さまざまな紅白饅頭のオーダーを承っております。サイズのご希望はもちろん(ときには特大サイズの紅白饅頭をご依頼いただくことも!)ご希望により、家紋や会社のマークをお入れすることも可能です。ちなみに、昔は「紅白饅頭」といえば大きなサイズのものが多く、貰って帰ったら家族で切り分けて食べる……という光景がそれぞれのご家庭にありました。今では家族の形も時代とともに変化し、お一人で食べ切れるサイズをご依頼いただくことが多くなっています。しかし、お菓子を食べていただく皆様の喜ぶ顔を思いながら、1つ1つ丁寧に作り上げる職人の思いは、けして変わることはありません。皆様の「ハレの日」の光景に、塩瀬の紅白饅頭を加えていただけましたら、とてもうれしく思います。
紅白饅頭
おめでたい席に使われる引き菓子の定番、紅白饅頭。年間を通してお求めいただく商品ですが、特に3月から5月にかけての時期、塩瀬総本家ではこの紅白饅頭づくりがピークを迎えます。卒業式や入学式、入社式などにお使いいただくのはもちろん、5月には創立記念日を迎える企業も多いのがその理由です。「紅」と「...
本饅頭
2023年、NHK大河ドラマ『どうする家康』の主人公となったことでも注目を浴びている徳川家康。塩瀬総本家の定番お菓子の1つ「本饅頭」が、この家康に深いゆかりを持つことをご存知でしょうか? 七代目・林宗二が創案した本饅頭ですが、徳川家康にまつわるこんなエピソードが伝わっています。徳川家康は仏に対し厚い信仰を持っていたことはよく知られていますが、戦の陣中でも念持仏を奉持していました。『江戸叢書 十方庵遊歴雑記』によれば1615年、大阪夏の陣の際に家康軍が戦った際、どこからか黒い鎧を着た法師武者が現れ、獅子奮迅の働きで敵を蹴散らした。無事勝利をおさめてのち、「あの武者は誰か」と聞いても誰も知るものがいない。そこで念持仏をおさめた御簾を開けてみれば全身が発熱して汗が流れ、鉄砲を受けた傷がある。これは御仏が加勢してくれたのかと感涙にむせび、何かご供養の品はないかと探したところ、戦場ゆえ適したものがない。傍らに塩瀬が献上した本饅頭があり、兜の上に持って供えた……この逸話から、本饅頭は「兜饅頭」とも呼ばれているのです。(塩瀬においては長篠の戦いでも本饅頭を献上していたと伝わっています) この本饅頭、ご存知ない方は「餡だけ?」と思うかもしれません。しかしこちら、しっかりと皮に包まれた“饅頭”なのです。餡は塩瀬総本家自慢のこし餡に、3日間じっくりと時間をかけて蜜煮した大納言を混ぜたもの。蒸し上げたときにこの大納言がボツボツと見える姿が鉄鋳物のよう。そこからも「兜饅頭」とも呼ばれるようになったいきさつが伺えます。 大粒の大納言の存在感がポイントとも言えますが、実はこの大納言、加工にもこだわりがあります。3日間の蜜煮する中で、火入れを調整することで口に入ったときの大納言の食感を絶妙な固さに調整し、歯ざわりとこし餡の滑らかさ、双方のバランスが取れるよう、口あたりの良さを追求しているのです。 さらに、本饅頭の最大の特徴は蒸し上がるとほぼ透明になってしまうくらい極薄の皮。この皮に包まれているからこそ、餡が溶けることなく、饅頭の形を保ったまま蒸し上げることができるのです。本饅頭づくりは、とても柔らかな生地を指先ほどの大きさに切り、薄く伸ばしながら餡を包んでいきます。皮を破ることなく、手早く均一に餡を包んでいくこの作業はベテランの職人が担当。和菓子作りの修行を積まないと挑戦すら難しい、まさに「職人の技」です。すべてを手作業で行うため作る数に限界があり、これこそまさに限定品ということができます。 500年以上もの長い期間、多くの人に食され、その形を留めてきた本饅頭。徳川家康も大層好み、お留め菓子(当人のみが食べれるお菓子)としたという逸話が伝わっています。「これと同じものを歴史上の偉人も食べていた」と考えると、悠久の時間の流れをより実感できるのではないでしょうか? 茶道のお茶菓子としてもご利用いただく事が多い本饅頭ですが、苦味や渋味が少し強めの日本茶との相性が抜群です。ぜひお気に入りのお茶を用意し、歴史に思いを馳せながらご賞味いただければと思います。 参考:『江戸叢書 十方庵遊歴雑記』(江戸叢書刊行会) 『大本山増上寺史 本文編』(増上寺) 『略縁起 資料と研究』(勉誠出版)
本饅頭
2023年、NHK大河ドラマ『どうする家康』の主人公となったことでも注目を浴びている徳川家康。塩瀬総本家の定番お菓子の1つ「本饅頭」が、この家康に深いゆかりを持つことをご存知でしょうか? 七代目・林宗二が創案した本饅頭ですが、徳川家康にまつわるこんなエピソードが伝わっています。徳川家康は...
桜餅
和菓子には、これから訪れる「季節」を先取りして感じさせる……という役割があります。春の到来を告げる代表的なお菓子の1つ、「桜餅」。多くの地域で桜の花が開花するのは3月末〜4月の始めですが、桜餅が販売されるのは一般的には2月から。3月3日、「桃の節句」のお祝いの際に手土産としてご利用いただくことも多いことから、塩瀬総本家では2月の末に桜餅づくりのピークを迎えます。最盛期には、職人たちが総出で早朝から桜餅づくりに勤しむのが毎年の光景です。 桜餅には関東風と関西風の2種類があるのをご存知でしょうか? 水溶きした小麦粉をクレープ状に焼き、餡を巻くのが関東風で、塩瀬総本家の桜餅はこちらのもの。江戸時代に隅田川のほとりにあった「長命寺」というお寺の門番が、境内の落ち葉を何かに利用できないものかと思い、このお菓子の考案につながりました。そして門前にお店を開いて売り出したところ評判になった……というのが由来だとか。一方関西風は水に浸した餅米を干し、粗めにひいたものを蒸した生地で餡を包んだもので、こちらも長命寺のものより少し時代は遅れますが、やはり江戸時代に考案されたといいます。それぞれ発祥となったお寺の名前から前者は「長命寺」、後者は「道明寺」と呼ばれることも。 この季節になると多くの和菓子店が一斉に桜餅を販売しますが、一見同じ関東風の桜餅に見えても店ごとの細かなこだわりが詰まっています。塩瀬総本家の桜餅の最大の特徴は、もっちり、ふんわりとした皮の柔らかさと食感です。多くの和菓子店は皮の生地に小麦粉と上新粉を使いますが、塩瀬総本家では小麦粉に加えるのは上南粉と上焼味甚粉。食感を追求した結果、この配合へとたどり着きました。この粉をむらなく混ぜて生地を作っていきますが、ポイントは「コシ」が出ないようにすること。混ぜすぎると小麦粉の中のグルテンが強くなってしまい、食感が変わってしまうのです。水分を調整しながら一定の速度できれいに混ぜ、なめらかになるように濾せば生地のできあがり。生地が出来上がったら今度は「焼き」の作業に。この生地は昔は1枚1枚手焼きでしたが、現在も一番忙しいシーズンは一日約5千個を作り上げるため、26年前から機械が導入されました。しかし焼きムラなく絶妙に火を通して焼き上げるための調整は、職人の長年の経験あってこそ。 きれいな桜色に焼き上げられた皮に包まれるのは、塩瀬総本家自慢の餡。和菓子の「命」ともいえる餡ですが、この餡づくりはとても時間と手間がかかるもの。餡づくりを外注したり仕入れるお店も多い中、塩瀬総本家ではきちんと自社で餡を炊き上げるのがこだわりです。使用している小豆は、北海道は十勝平野の中心、音更(おとふけ)町で栽培された「エリモ小豆」。なめらかに練上げられたこし餡は、桜餅に使う場合には皮の食感に合わせて固さも調整。口に入れたときの口溶けを邪魔せず、かといって柔らかすぎて垂れるようなこともない、絶妙な塩梅へと仕上げています。水分が多くなると餡と皮の糖度、つまり“甘さ”が違うとどちらかに水分が移行してしまう……という問題も起こるため、皮と餡の糖度を同じ様になるように調整。こういった細かな気配りの結果、他店のものよりも長く柔らかな触感を保つことができるのも塩瀬総本家の桜餅の特徴です。 桜餅に欠かせないのが、この桜の葉の塩漬け。この葉は私達が普段目にするソメイヨシノではなく、白い花を咲かせる「大島桜」という種類の葉が使われています。葉の状態ではあまり匂いがないのですが、塩漬けにすることであの独特の香りが出てくるのですから不思議なものですね。ちなみによくお客様からも聞かれるのは「この葉って食べてもいいの?」ということ。基本的にはこの桜の葉を巻くことで、香りとほのかな塩味が付くことを目的としているものですが、お客様のお好みで召し上がっていただいてもいいと思います。その際は葉の真ん中、芯の部分を剥がすと食感良くお召し上がりいただけるので、この方法をぜひお試しください。 ソメイヨシノの開花が終わる頃には、店頭での販売を終了する事が多い桜餅。ご賞味いただき、新たな芽吹きの季節の到来をその味わいとともに感じていただければと思います。
桜餅
和菓子には、これから訪れる「季節」を先取りして感じさせる……という役割があります。春の到来を告げる代表的なお菓子の1つ、「桜餅」。多くの地域で桜の花が開花するのは3月末〜4月の始めですが、桜餅が販売されるのは一般的には2月から。3月3日、「桃の節句」のお祝いの際に手土産としてご利用いただくこと...
柏餅
柏餅は、5月5日の「端午の節句」に欠かせないお菓子。店頭に柏餅が並びだすと、初夏の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか? 1700年代後半、江戸時代に誕生したという柏餅。柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない」ひいては「子孫繁栄」の象徴とされ、端午の節句に柏餅を供えるという風習が生まれました。その後、参勤交代で全国に広まったとされる、とても古い歴史を持つお菓子の1つです。 塩瀬総本家でも白と赤、2種類の柏餅をご用意しています。白い柏餅は、北海道産エリモショウズを使用した、塩瀬総本家自慢のこし餡を入れたもの。赤い柏餅は、コクのある「みそ餡」が入っています。このみそ餡は、白餡に京都産の白味噌を加えたもの。通常の料理に使う白味噌とはまた違い、塩分が控えめなので、みそ餡独特の風味と甘味が生まれるのです。 こだわりの餡を包むお餅は、上質な上新粉をじっくりと蒸し、つき上げて仕上げたもの。柔らかさと歯切れの良さが自慢です。この生地で餡を包み、ハマグリの形に1つ1つ整えたら、柏の葉を巻いて出来上がり。葉で巻いた時のおさまりの良さと、縁起物であるハマグリの形にあやかって作っています。多くの和菓子店の柏餅がハマグリの形をしていますが、両端を少し上げた「兜」の形に成形しているお店もわずかながらあるようです。実は塩瀬総本家でも、兜の形に成形していたこともあったのですが、今はハマグリの形に統一しています。 柏餅の特徴である「柏の葉」。この葉っぱにも、いろいろと秘密があるのをご存知でしょうか? 塩瀬総本家の柏餅は、こし餡には茶色、味噌餡には緑色の柏の葉を使っていますが、昔は、すべて茶色でした。柏の葉が、お餅を包める大きさに成長するのは6月ごろ。しかし、柏餅のシーズンは5月5日までですからちょうどいい大きさの柏の葉は手に入らない。そのため昔は、柏の葉を適切な大きさの時期に収穫し、煮沸して乾燥させ、翌年まで保存していたそうです。そのため、柏餅の葉っぱは茶色でした。現在は柏の葉を緑色のまま保存する技術もあるので、塩瀬総本家では2種類の葉の色で柏餅を提供できるというわけです。ちなみに柏の木が少ない西日本などの地域では、柏の葉以外の葉を使うこともあると聞きます。 この柏餅、柏の葉という自然界のものを使うため、どうしても日持ちがしない……という特性があります。そのために作りおきができず、端午の節句が近くなると大型連休もなんのその、作業場は毎日早朝から柏餅づくりに大忙し! この光景もまた、塩瀬総本家の風物詩の1つです。毎年、5月5日までしか販売されない柏餅。お子様の健やかな成長を願いながら、ぜひお召し上がりください。
柏餅
柏餅は、5月5日の「端午の節句」に欠かせないお菓子。店頭に柏餅が並びだすと、初夏の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか? 1700年代後半、江戸時代に誕生したという柏餅。柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない」ひいては「子孫繁栄」の象徴とされ、端午の節句に...
桜餅
和菓子には、これから訪れる「季節」を先取りして感じさせる……という役割があります。春の到来を告げる代表的なお菓子の1つ、「桜餅」。多くの地域で桜の花が開花するのは3月末〜4月の始めですが、桜餅が販売されるのは一般的には2月から。3月3日、「桃の節句」のお祝いの際に手土産としてご利用いただくことも多いことから、塩瀬総本家では2月の末に桜餅づくりのピークを迎えます。最盛期には、職人たちが総出で早朝から桜餅づくりに勤しむのが毎年の光景です。 桜餅には関東風と関西風の2種類があるのをご存知でしょうか? 水溶きした小麦粉をクレープ状に焼き、餡を巻くのが関東風で、塩瀬総本家の桜餅はこちらのもの。江戸時代に隅田川のほとりにあった「長命寺」というお寺の門番が、境内の落ち葉を何かに利用できないものかと思い、このお菓子の考案につながりました。そして門前にお店を開いて売り出したところ評判になった……というのが由来だとか。一方関西風は水に浸した餅米を干し、粗めにひいたものを蒸した生地で餡を包んだもので、こちらも長命寺のものより少し時代は遅れますが、やはり江戸時代に考案されたといいます。それぞれ発祥となったお寺の名前から前者は「長命寺」、後者は「道明寺」と呼ばれることも。 この季節になると多くの和菓子店が一斉に桜餅を販売しますが、一見同じ関東風の桜餅に見えても店ごとの細かなこだわりが詰まっています。塩瀬総本家の桜餅の最大の特徴は、もっちり、ふんわりとした皮の柔らかさと食感です。多くの和菓子店は皮の生地に小麦粉と上新粉を使いますが、塩瀬総本家では小麦粉に加えるのは上南粉と上焼味甚粉。食感を追求した結果、この配合へとたどり着きました。この粉をむらなく混ぜて生地を作っていきますが、ポイントは「コシ」が出ないようにすること。混ぜすぎると小麦粉の中のグルテンが強くなってしまい、食感が変わってしまうのです。水分を調整しながら一定の速度できれいに混ぜ、なめらかになるように濾せば生地のできあがり。生地が出来上がったら今度は「焼き」の作業に。この生地は昔は1枚1枚手焼きでしたが、現在も一番忙しいシーズンは一日約5千個を作り上げるため、26年前から機械が導入されました。しかし焼きムラなく絶妙に火を通して焼き上げるための調整は、職人の長年の経験あってこそ。 きれいな桜色に焼き上げられた皮に包まれるのは、塩瀬総本家自慢の餡。和菓子の「命」ともいえる餡ですが、この餡づくりはとても時間と手間がかかるもの。餡づくりを外注したり仕入れるお店も多い中、塩瀬総本家ではきちんと自社で餡を炊き上げるのがこだわりです。使用している小豆は、北海道は十勝平野の中心、音更(おとふけ)町で栽培された「エリモ小豆」。なめらかに練上げられたこし餡は、桜餅に使う場合には皮の食感に合わせて固さも調整。口に入れたときの口溶けを邪魔せず、かといって柔らかすぎて垂れるようなこともない、絶妙な塩梅へと仕上げています。水分が多くなると餡と皮の糖度、つまり“甘さ”が違うとどちらかに水分が移行してしまう……という問題も起こるため、皮と餡の糖度を同じ様になるように調整。こういった細かな気配りの結果、他店のものよりも長く柔らかな触感を保つことができるのも塩瀬総本家の桜餅の特徴です。 桜餅に欠かせないのが、この桜の葉の塩漬け。この葉は私達が普段目にするソメイヨシノではなく、白い花を咲かせる「大島桜」という種類の葉が使われています。葉の状態ではあまり匂いがないのですが、塩漬けにすることであの独特の香りが出てくるのですから不思議なものですね。ちなみによくお客様からも聞かれるのは「この葉って食べてもいいの?」ということ。基本的にはこの桜の葉を巻くことで、香りとほのかな塩味が付くことを目的としているものですが、お客様のお好みで召し上がっていただいてもいいと思います。その際は葉の真ん中、芯の部分を剥がすと食感良くお召し上がりいただけるので、この方法をぜひお試しください。 ソメイヨシノの開花が終わる頃には、店頭での販売を終了する事が多い桜餅。ご賞味いただき、新たな芽吹きの季節の到来をその味わいとともに感じていただければと思います。
桜餅
和菓子には、これから訪れる「季節」を先取りして感じさせる……という役割があります。春の到来を告げる代表的なお菓子の1つ、「桜餅」。多くの地域で桜の花が開花するのは3月末〜4月の始めですが、桜餅が販売されるのは一般的には2月から。3月3日、「桃の節句」のお祝いの際に手土産としてご利用いただくこと...