紅白饅頭

紅白饅頭

 

おめでたい席に使われる引き菓子の定番、紅白饅頭。年間を通してお求めいただく商品ですが、特に3月から5月にかけての時期、塩瀬総本家ではこの紅白饅頭づくりがピークを迎えます。卒業式や入学式、入社式などにお使いいただくのはもちろん、5月には創立記念日を迎える企業も多いのがその理由です。「紅」と「白」、2個で1セットですから、生産する数はその倍。ときに千セット以上にもなる紅白饅頭づくりは、大きなご注文が入る日には生産から箱詰めまで職人が総出で行なう「春の風物詩」の1つです。三島由紀夫の小説『仮面の告白』(1949年)にも主人公が通う学校の式日の様子が描かれ、「かえりに貰う塩瀬の菓子折」と書かれており式日の定番として塩瀬饅頭が使われていることが伺えます。

 

 

 

 

 

 

この「引き菓子」の風習と「紅白饅頭」、双方ともに塩瀬に由来があることをご存知でしょうか? 実は塩瀬初代・林浄因が自身の婚礼の際、紅白の饅頭を引出物にしたことが「紅白饅頭」の文化のはじまり。饅頭博物誌によれば「当時としてはすばらしく新鮮でハイカラなアイデア、幕末か明治の初期にチョコをたっぷりつけたケーキを配るようなもの」で話題になり、そこからおめでたい席には紅白饅頭、もしくはお菓子を振る舞う風習が広まっていったというわけです(とくに関西に紅白饅頭の文化が根強いのはそのためです)。

 

その時、林浄因が子孫繁栄を願い一組の紅白饅頭を、大きな丸い石の下に埋めたと言われており、その石は林浄因を祀った奈良県の林神社に「饅頭塚」として今も残っています。「紅白」という色の組み合わせ自体、由来はとても古いもの。源平の戦いにおいて源氏が白旗、平家が赤旗を用いたとも言われています。この赤色、使う色素によっても色合いが変わってくるので、どんな「紅」を出すのかは和菓子店ごとにもこだわりがあるところです。

 

 

 

 

 

 

塩瀬総本家の紅白饅頭は、皮は名物の「志ほせ饅頭」と同じもの。餡は「白」が、志ほせ饅頭と同じこし餡、「赤」には白餡が使われています。これは、黒い餡を中に入れると生地の赤色がきれいに見えないからというこだわり。この白餡入りの薯蕷饅頭は、塩瀬では「紅白饅頭」でしか食べられないある意味“レアもの”と言えるかもしれません。もっちりとした皮の食感とそれぞれの餡の組み合わせ、ぜひともお楽しみください。

 

 

 

 

 

 

塩瀬では、さまざまな紅白饅頭のオーダーを承っております。サイズのご希望はもちろん(ときには特大サイズの紅白饅頭をご依頼いただくことも!)ご希望により、家紋や会社のマークをお入れすることも可能です。ちなみに、昔は「紅白饅頭」といえば大きなサイズのものが多く、貰って帰ったら家族で切り分けて食べる……という光景がそれぞれのご家庭にありました。今では家族の形も時代とともに変化し、お一人で食べ切れるサイズをご依頼いただくことが多くなっています。しかし、お菓子を食べていただく皆様の喜ぶ顔を思いながら、1つ1つ丁寧に作り上げる職人の思いは、けして変わることはありません。皆様の「ハレの日」の光景に、塩瀬の紅白饅頭を加えていただけましたら、とてもうれしく思います。

 

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