柏餅は、5月5日の「端午の節句」に欠かせないお菓子。店頭に柏餅が並びだすと、初夏の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか? 1700年代後半、江戸時代に誕生したという柏餅。柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない」ひいては「子孫繁栄」の象徴とされ、端午の節句に柏餅を供えるという風習が生まれました。その後、参勤交代で全国に広まったとされる、とても古い歴史を持つお菓子の1つです。
塩瀬総本家でも白と赤、2種類の柏餅をご用意しています。白い柏餅は、北海道産エリモショウズを使用した、塩瀬総本家自慢のこし餡を入れたもの。赤い柏餅は、コクのある「みそ餡」が入っています。このみそ餡は、白餡に京都産の白味噌を加えたもの。通常の料理に使う白味噌とはまた違い、塩分が控えめなので、みそ餡独特の風味と甘味が生まれるのです。
こだわりの餡を包むお餅は、上質な上新粉をじっくりと蒸し、つき上げて仕上げたもの。柔らかさと歯切れの良さが自慢です。この生地で餡を包み、ハマグリの形に1つ1つ整えたら、柏の葉を巻いて出来上がり。葉で巻いた時のおさまりの良さと、縁起物であるハマグリの形にあやかって作っています。多くの和菓子店の柏餅がハマグリの形をしていますが、両端を少し上げた「兜」の形に成形しているお店もわずかながらあるようです。実は塩瀬総本家でも、兜の形に成形していたこともあったのですが、今はハマグリの形に統一しています。
柏餅の特徴である「柏の葉」。この葉っぱにも、いろいろと秘密があるのをご存知でしょうか? 塩瀬総本家の柏餅は、こし餡には茶色、味噌餡には緑色の柏の葉を使っていますが、昔は、すべて茶色でした。柏の葉が、お餅を包める大きさに成長するのは6月ごろ。しかし、柏餅のシーズンは5月5日までですからちょうどいい大きさの柏の葉は手に入らない。そのため昔は、柏の葉を適切な大きさの時期に収穫し、煮沸して乾燥させ、翌年まで保存していたそうです。そのため、柏餅の葉っぱは茶色でした。現在は柏の葉を緑色のまま保存する技術もあるので、塩瀬総本家では2種類の葉の色で柏餅を提供できるというわけです。ちなみに柏の木が少ない西日本などの地域では、柏の葉以外の葉を使うこともあると聞きます。
この柏餅、柏の葉という自然界のものを使うため、どうしても日持ちがしない……という特性があります。そのために作りおきができず、端午の節句が近くなると大型連休もなんのその、作業場は毎日早朝から柏餅づくりに大忙し! この光景もまた、塩瀬総本家の風物詩の1つです。毎年、5月5日までしか販売されない柏餅。お子様の健やかな成長を願いながら、ぜひお召し上がりください。