焼き印

焼き印

塩瀬総本家の看板商品である「志ほせ饅頭」といえば、「志ほせ」の焼き印がついた小ぶりな薯蕷饅頭の姿を、すぐ思い浮かべていただけるかと思います。


今回は、この「焼き印」のお話です。和菓子ではおなじみの意匠である焼き印。実はこの「志ほせ饅頭」の「志ほせ」というのも、焼き印から生まれた名前なのです。というのも、この「志ほせ饅頭」が現在の大きさにリニューアルされた際、旧字の「鹽瀬」という漢字は画数が多いため、焼き印で押すことが難しかったのだとか。そこで志の当て字と共に「志ほせ」という表記になり、名前も「志ほせ饅頭」となった、という経緯があります。


 

作業場には、数多くの焼き印があります。ススキや松葉など、季節に合わせたお菓子に使うもの。「干支饅頭」に使う十二支は、文字とイラストの両方が。「寿」や「祝」などお祝いに使う文字は、饅頭の大きさに合わせ各種取り揃えています。また、宮内庁や皇室関連のお菓子に使われる菊の御紋も。これらは、花びらの数によって使われる場所が違います。焼き印は専門業者に発注して作っていただくのですが、実は意外と消耗品。というのも、高温に熱するために酸化してしまい、志ほせ饅頭などよく使う焼き印は1年も持ちません。



この「焼き印を押す」という作業の様子を、少しご紹介しましょう。できたての饅頭に焼き印を押すと、皮が焼き印にくっついてしまうため、志ほせ饅頭に焼き印を押す作業は、饅頭の粗熱が少し取れてから始まります。ガス火で焼き印を熱し、濡れ布巾で少し温度を調節してからポンポンとリズミカルに押していきます。焼き色のムラが出ないよう、そして中心から外れないようにスピーディーに押していくという作業。まっ白い薯蕷饅頭の表面がキュッとわずかに沈み、焼き印が付くこの様子、見ていてとても“気持ちが良い”のです。また、この作業の時にはなんとも甘く香ばしい、とてもいい匂いが立ち上ります。バーベキューやキャンプで「焼きマシュマロ」をしたことがある方には、あの匂いというとイメージしやすいでしょうか? いつの日か、お客様に体感していただきたいものの1つでもあります。


 


今はフードプリントも進化し、食品に食用色素を使ってイラストなども印字できる時代となりました。塩瀬でも、イベント販売やノベルティなどにさまざまな「オリジナル饅頭」のご依頼がございます。もちろんそういったものにもご対応できますが、昔ながらのこの焼き印というスタイルを、お客様からご要望いただくことも実は多いのです。お菓子に映え、「おいしそう」と思えるからでしょうか?シンプルな意匠ながら、とても奥深いものだと思います。会社のロゴやマークなど、特注の焼き印をご用意することも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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